ガンジス河やタージマハルが有名な北インドですが、南インドとの文化の違いはどういったものなのでしょうか。
また、双方の人種や言語、食事内容なども気になりますね。
そこで今回は、「北インドと南インドの文化の違いって?人種や言語・食事なども」です。
北インドと南インドとは
南アジア地区に位置し、2024年現在、中国を追い抜き14億人という世界最大の人口を有する国であるインドは、328.7万 km2もの広大な面積を持っていることから、大きく北インドと南インドに分かれています。
もちろん西インドと東インドもあり、西であれば「インド最大の都市」と言われるムンバイ(旧名・ボンベイ)が、東であればコルカタ(旧名・カルカッタ)などが有名ですね。
ちなみに、僕達・私達がインドと聞いて思い浮かべることが多いガンジス河やタージマハルなどの観光名所や、日本の多くのインド料理店で提供されるカレーやナンといった料理は、全て北インドにあるものなんですよ。
つまり、筆者を含む多くの日本人がインドを連想する時に思い浮かべるものは、ほとんどが北インドという訳です。
対して、南インドはどういうところなのかというと、北インドは気温こそ高いものの、日本と同じように四季があるのに対し、南インドは1年を通して温暖な気候なんですが、夏の時期であれば地区によっては何と40度を超える場合もあるんだとか。
これはとても「温暖」とは言えませんよね。
このように気候ひとつ取っても大きな違いがあるんですが、同じ国でありながら北と南の違いはまだまだ存在しますので、ここからは人種・言語・食事と3つのカテゴリーに分けてご紹介していきます。
おそらく読み進めているうちに、「同じ国なのに、こんなに違うの?!」と驚くこと間違いなしですよ。
では早速!
北インドと南インドの人種
北インドと南インドの人種の違いはどんなものなのかというと・・・
などがあります。それぞれ解説していきますね。
アーリア人とドラヴィダ人に分かれる
僕達日本人の多くがインドと聞いて思い浮かべるのは北インドなんですが、その北インドはアーリア人、そして南インドはドラヴィダ人という人種に分かれています。
アーリア人の「アーリア」とは、古代インドで使用されていた言語であるサンスクリット語で「高貴な者」の意味で、そんな彼ら彼女らは何と紀元前1500年頃にインド北部のパンジャーブ地区へと到着。
その後、紀元前1000年頃には、インド国内のみならず世界的に「聖なる河」として知られているガンジス河の流域に定住し、農耕生活を始めたと言われています。
紀元前と聞くと、現代に生きる我々からすると「どれだけ昔なんだ!」と思ってしまいますが、それほど太古の昔からインドに人類が存在していたと考えると、さすが神秘の国だなと感心してしまいますよね。
こうしてインドへとやってきたアーリア人達ですが…。
実はこの当時のインド北部およびガンジス河流域には、すでに先住民のドラヴィダ人がいたために・・・
ドラヴィダ人「何だお前達は。どこの誰だ?」
アーリア人「邪魔だよ、どっか行け。逆らうなら容赦しないぞ」
という感じで、2つの人種の間で争いが勃発。
結果、馬に乗った勇敢な兵士や戦車といった近代的な文明を持っていたアーリア人が勝利を治めたことからドラヴィダ人を支配したんですが、その過程において、争いに敗れたドラヴィダ人達はインド南部に追いやられていったと言われています。
そしてその後、アーリア人が次第に勢力を拡大していったことから、アーリア人が以前から信仰していたバラモン教(ヒンドゥー教の前身となる宗教)やヒンドゥー教独自の身分制度である「カースト」が生まれたんですよ。
こういった背景があったことから、現在も北部にはアーリア人、南部にはドラヴィダ人が多く住んでいるんですが、この2つの人種は全てにおいてと言っても良いほどあらゆる点が異なっています。
わかりすいところで言うと、外見です。
アーリア人の場合、多くの人の肌は白く、ヨーロッパ系の人達のように鼻筋が通っており、男女問わず背が高いといった特徴があるのに対し、ドラヴィダ人の肌の色は黒く、アーリア人に比べて男女共に背も低い傾向があるんです。
また、インドやネパールで信仰されているヒンドゥー教の考えに基づいて作られたカースト制度において、最も身分が高い人達を「バラモン」、最も低い人達を「ダリット(正式には、カーストに属すことすら許されていない身分の人を指す言葉)」と言うんですが、多くのバラモンの肌は白く、ダリットは黒いので、肌の色を見ればある程度、身分がわかります。
ちなみに、僕達がインド映画で見るボリウッド(アメリカのハリウッドと、インド映画の7~8割を制作していると言われる西インド・ムンバイの旧名であるボンベイを掛けた造語)女優さん達は、ほぼ間違いなくバラモン階級のアーリア人なんですよ。
だからなのか、インド人女性は色白の肌にこだわり、都会に住んでいる人であれば美意識もかなり高いんだとか。
やはり女性である以上、「美しくありたい」という気持ちが強い人が多いんでしょうね。
またそれだけではなく、上位カーストから下位カースト(アーリア人からドラヴィダ人)に対する差別や理不尽な暴力なども存在していますので、なおさらだと言えるでしょう。
北は押しが強く、南は穏やか
これはいわゆる性格・気質のことなんですが、北インドの人達は一般的に押しが強く強引な性格をしているとされ、一方、南インドの人達は北部とは対照的に穏やかで控えめな性格をしていると言われています。
そういう意味では、南インドの人達は僕達日本人に似ている気がしますね。
どういうことかと言うと、北インドの人達の多くは老若男女問わずお喋り好きで、たとえばの話、北インド男性はたとえ相手が初対面であっても家族構成や年収といったプライバシーに関することを次々と聞いてくるんですよ。
日本であればまず聞かれることの無い質問ですよね。
一般的な日本人の感覚からすると、「何でそんなこと聞いてくるんだ?図々し過ぎるだろ!」と思ってしまうかもしれませんが、彼らからすると悪気は一切無く、ただ単にコミュニケーションのひとつとして聞いているだけなんです。
また、「押しが強い」という点に関しては、これも例えばの話なんですが、首都・ニューデリーや「ヒンドゥー教の聖地」として有名なヴァラナシ(いずれも北部に位置)などでは、空港を出たその瞬間からタクシーやリキシャー(三輪タクシーの意)などの客引きの男性から「どこへ行くんだ?乗せてってやるよ!」「安くしとくから乗れよ!」といった若干高圧的な罵声にも似た声が浴びせられるんですよ。
そして、このように声をかけてくる人達は大抵、観光客をターゲットにいわゆるぼったくりを行い荒稼ぎをしている人達であり、特に既述したヴァラナシは日本人の観光客もよく訪れることから、日本語で話しかけてくる人もいますので、決してその口車に乗せられず、毅然とした態度で「NO!」の意思表示をするようにして下さい。
これに対して、南部の人達は一般的に大人しく控えめで、「白か黒か」の質問に関してもはっきりとは言わず「う~ん。それはちょっとどうだろうね」といったようなオブラートに包んだ言い方をするんです。
また、南部の人達の客引きの人達も場所によっているにはいますが、一言「No thank you」と言えば、素直に引き下がってくれるんだとか…。
このあたりも、どこか日本人の国民性と似ている所がありますよね。
さらに、南部の代表的な州とも言えるタミルナードゥ州に住んでいるタミル人の人達を例に取ると、彼ら彼女らの多くは親しみやすく落ち着いた性格であり、日本人に深く根付いているおもてなしの心も日本人以上のものがあると言われています。
それを裏付けるかのように、観光客の方々だけではなくタミル人同士であっても、誰かを自宅に招いた際には必ず何かしらの食事を提供するのが礼儀とされていますから。
事実、YOUTUBERのタミル人男性が自身のチャンネルにおいて、「たとえばの話、もし僕が友人宅に行って何も食事を提供されなかったとしたら、僕のお母さんは2度とその家に行かないように…と言うでしょう」と話しています。
つまり、それは「歓迎されていない」ということなんでしょうね。
仕事に関しても勤勉で真面目・忍耐強くしっかり者・謙虚でいることを美徳と考えている人が多いなど、北部の人達とは全く違う気質が特徴です。
ですので、僕達日本人がインドに旅行に行くのであれば、気質がよく似ている南インドの方が適応しやすいと考えられます。
こういった南北の違いをしっかりと自身の目で見て経験することで、きっとインドに対しての理解が深まるはずですので、できれば南北両方を観光することをオススメします。
ひょっとすると、そのあまりの気質の違いに「本当に同じ国なの?」と混乱しつつも、「良くも悪くもさすがインドだなあ」と感心し、ますます興味を惹かれること間違い無しですよ。
続いて言語の違いについてです。
北インドと南インドの言語
北インドと南インドの言語の違いは、どういったものがあるのかというと・・・
- 北部は主にヒンディー語を、南部は地方ごとに異なる
- 言語間における対立も
それぞれ順に解説すると・・・
北部は主にヒンディー語を、南部は地方ごとに異なる
現在人口14億人を抱える大国であるインドの公用語はヒンディー語、準公用語は英語なんですが、実はそれだけではなく、インド全土で見ると何と驚くべきことに600もの言語が話されており、北インドでは主にヒンディー語が、そして南インドではタミル語をはじめとしたさまざまな言語が使われています。
もちろんそれだけではなく、西インドに位置し「インド最大の都市」と言われる都市・ムンバイ(旧名ボンベイ)であればマラーティー語が、(ヒンディー語や英語も話されています)東インドのコルカタ(旧名カルカッタ)であればベンガル語など、東西南北で使われている言語が全く異なるんですよ。
そのため、たとえばの話、ムンバイに住んでいる人とコルカタに住んでいる人が、共通語でなくお互いの地元の方言で話をするとなると、あまりにも違い過ぎて会話が成立しないんですから、まったく異なるのも頷けますね。
そう考えると、人口、そして国内における言語数の多さは伊達ではありませんね。
前述したことを覆すようで申し訳ないんですが、一般的なくくりとして、肌の色に関係無く「ヒンディー語を話していれば(母語に持つ場合も含む)アーリア人、タミル語をはじめとしたその地方ごとの言葉を話していればドラヴィダ人」というものが存在するんです。
事実、アーリア人であっても肌の色が浅黒い人もたくさんいらっしゃいますし。
そう考えれば、既述したようにアーリア人=高貴な者ですので、肌の色ではなく話している言語で見分けることが確実な方法と言えるでしょう。
言語間における対立も
そして上でご紹介したカースト制度と同じように、80年前から現在に至るまでヒンディー語とタミル語間における争いが続いています。
事実、数年前にはタミル語で「ヒンディー語は知らん。失せろ!」なる過激な言葉がプリントされたTシャツがインド国内で製作・販売され、タミル人たちの間で爆発的な売り上げを記録したそうです。
歴史的に見れば、アーリア人達より先にインドに住んでいたドラヴィダ人達が話していたのがタミル語、後からインドにやってきたアーリア人達が話していたのがヒンディー語ですので、ドラヴィダ人側からすれば「私達が話しているタミル語の方が歴史が古いんだ。あいつら(アーリア人)が勝手に広めたヒンディー語が公用語になってるのは気に入らない」ということなのかもしれませんね。
なお、この2つの言語は「全てにおいて」と言っても良いくらいの違いがあるんですが、たとえば文法であればヒンディー語の場合は「SVO」なる形式であり、英語と同じく主語→目的語→動詞の順で文章が構成されているのが特徴です。
例文を挙げると「私は・好きです・それが」といった感じですね。
一方、タミル語は日本語と同じ「SOV」形式であり、主語→目的語→動詞の順で文章が構成されていますので、僕達日本人には比較的覚えやすいと言えます。
また会話においても、たとえば「こんにちは」を例に取ると、ヒンディー語では日本でも比較的馴染み深いと思われる「ナマステ」なんですが、タミル語では「ワナッカン」と全く異なるんですよ。
思わず、「ナしか共通点が無いじゃないか!」とツッコミたくなるほどの違いがありますので、2言語の間で争いが起こるのも納得できる気がしますよね。
このように、北インドでは主にヒンディー語、南インドではタミル語をはじめとしたその地区ごとの言語が話されており、既述したようにインドには600もの言語があることから、中には自身の生まれ育った街の言葉(方言)しか話せない方もいらっしゃり、そういった方は準公用語である英語を話せる人達から下に見られることがあるといいます。
というのも、インドは現代においても目覚ましい発展の一方で貧富の差が激しい側面を持っていますので、たとえばヒンディー語を例に取ると、ヒンディー語しか話せない人が英語話者の人に話しかけると「何だこいつ、英語もろくに喋れないのか!?」といったような顔をされたり、いい加減な対応をされることもあるんだとか。
おそらく英語が準公用語とされているだけに、英語話者の人達からすると「ヒンディー語を喋る人=教育を満足に受けていない人・田舎者」といった意識があるのかもしれませんね。
こういった意識を持つのは、当然褒められたことではありませんが、ひょっとするとここにも既述したアーリア人とドラヴィダ人の対立意識があるとも考えられますので、頭ごなしに否定することは不可能と言えるでしょう。
続いては食事編です。
北インドと南インドの食事
北インドと南インドの食事内容の違いはどんなものなのかというと・・・
- 北部のカレーはこってり、南はあっさり
- 北部の主食はパン類、南部は米類
順に解説すると・・・
北部のカレーはこってり、南はあっさり
インドと言えばまず第一に浮かぶのはやはりカレーですが、カレーに使われているスパイスや味付けは北部と南部で全く異なり、北部ではこってりな濃い味、南部はさっぱりしたあっさり味なのが特徴です。
これにはおそらく様々な理由があるんですが、最たるものは双方の気温差と考えられます。
というのも、一般的にインドは気温が高く暑いというイメージがありますが、冬場の北部の気温は南部と比べると5~8℃の差があるため、現地の人達はダウンジャケットなどを着用して防寒に努めるそう。
対して、南部は1年を通して気温が30℃前後、さらに夏場であれば場所によっては何と40度を超えることもあるなど、言わば常夏なんです。
「40℃なんて常夏っていうレベルじゃ無いだろう!」というツッコミはご勘弁下さい。
つまり、気温が低い北部では寒さをしのぐために濃厚でとろみのあるものが、年中常夏と言える南部ではさっぱりと食べることができるように、油っこくなくライトな口当たりのものが好まれるんですよ。
同じ国、しかも代表的な料理でありながら、ここまで違うのは珍しいですよね。
ちなみに、僕達がインド料理店で食べることが多い大皿に盛りつけられたセット料理には実は名前があり、ターリーと呼ばれるんですが、これも北インド式のものであり、南インドではミールスと呼ばれています。
また大皿ではなくバナナの葉にカレーをはじめとした料理が直に盛り付けられており、それらをスプーンではなく手で混ぜ合わせて食べるなど、様々な箇所に文化の違いが垣間見えるのは、さすがインドという気がします。
北部の主食はパン類、南部は米類
そしてそもそも南北の食文化における1番の違いは、北部が日本におけるインド料理の定番とも言えるナンや、全粒粉を練り込み、発酵させずに焼いたパン「チャパティ」といったパンを使った物が多いのに対し、南部はカレー風味の炊き込みご飯「ビリヤニ」のほか、ターメリックやショウガなどと一緒にレモン汁と塩を混ぜた、その名も「レモンライス」など、お米を使った物が主なんですよ。
なぜ南北で「まるで正反対」と言っても良いぐらいの違いがあるのかというと、それは双方の気温差が挙げられます。
北部では冬と他の時期の気温差がはっきりしているため、小麦とお米の両方が採れ、どちらも食卓に並ぶんですが、南部では気温が高く小麦が採れづらいことから、必然的にお米を使った料理が多くなるんですね。
こういった違いは主食だけでなく、おやつ感覚で食べることができる軽食においても違いは存在します。
北部であれば、定番のおやつとも言える小麦粉を練って作った生地に、じゃがいもや羊のひき肉などを潰したものを入れ、クミンやターメリックなどの香辛料で味付けし油で揚げた「サモサ」など。
南部であれば、豆とお米を発酵させて作った生地をまるでクレープのようにくるくると巻いて焼いた「ドーサ」など、調理法や食材が全く違うものが食されているんです。
そう考えると、やはりインドという国は様々な意味で本当に奥深いと感じますよね。
このように、同じ国でありながら南北で食文化が全く異なることを考えれば、ある意味インドは国ではなく大陸であり、東西南北に存在しているそれぞれの州がひとつの国だと言っても過言ではありません。
ですから、皆さんも「インドに旅行に行こう」と思い立った際にはぜひ北部のニューデリーやヴァラナシだけではなく、ぜひ南部の様々な都市も訪れてみることをオススメします。
そうすることで、きっと「今まで北部にしか行ったことが無かったから、こういう街とか文化があるなんて知らなかったよ。もっと早く来れば良かったなあ」と思い、あなたのインドという国ひいては世界に対する理解と関心が深まること間違いなしですよ。
まとめ
アーリア人とドラヴィダ人、ヒンディー語とタミル語、パンと米など様々な点が異なる南北インド。
しっかりと理解し、異文化を堪能しましょう。
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