リコの興味しんしん

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各々の興味・関心事などに関する雑学を書いていきます。

のびのびTRPGスチームパンクのソロプレイをやってみた!最終回!!

この短編小説は、「のびのびTRPGスチームパンク」のソロプレイを基に素人が作成しています。
そのため、トンデモ展開、投げっぱなし、伏線未回収などがあります。
また、誤字脱字・表現力不足・矛盾、カードの説明と違うなどもあります。
ご了承ください。

のびのびTRPGソロ最終回:脱出?

箱外観
タブロンとの戦闘に勝利したあと、その戦闘でできた穴を通り洞窟から外へ出られた柊たち探察班一行。そこで柊たちが見たものとは…

1脱出

先ほどの戦闘時の緊張感とは打って変わって、ゆったりとした時間が流れる砂浜へ抜け出した。
「やった~、外だ~」
暗く不安渦巻く洞窟から抜け出すことができた開放感から、誰からということもなく歓声が上がる。
そんな歓声が上がる中、「柊さん、あれってもしかして…」菊池が左手方向を指差す。
柊は促されるまま、菊池が指さす方を見る。
「ああ、街…だな」
その声に先ほどのものとは比べものにならないほどの歓声が上がった。
その様子は、まさに歓喜という言葉がよく当てはまる。
「柊さん、このまま歩いて行けそうですよ!」と飛び跳ねて喜ぶ菊池。
「いけそうだな」
街がある方向をよく見ると、両端は砂浜だがその間は少し盛り上がり草が生え細い道のようになっていて、陸続きでそこまで行けるようになっていた。どうやら満潮になっても大丈夫そうだ。
柊は頭上を見上げると、太陽はまだ真上にきていなかった。
「では、探索班を3つに分ける。1つはここに残り様子を見ていてくれ。菊池、頼む。2つ目は、私と一緒にさっきの施設の監視。3つ目は北山を筆頭に、桑原ら生活班をここまで誘導してきてくれ」
柊の指示に従い、一行は自然と3つの班に別れた。
いざ出発いう時、「柊さん、生活班と一緒に引き返して来た時、あの施設を通りますが、どう説明します?キチンと説明すると柊さんのことも話す必要が出てきますが」と北山が問う。
「そうだな…あそこは犯罪組織の施設で、今は安全だがいつ危険な状態になるか分からない。また、ここのことを誰かに話すと、自分だけじゃなく家族・友人などの命を危険に晒す可能性があると言えば良いだろう」
「そうですね。嘘は言っていないので、演技っぽくならないと思います。それでいきます」と北山は頷く。
「よし。菊池、何かあったらすぐに教えてくれ。では、行くぞ」
菊池ら数人を残し、柊たちは生活班を呼びに行くため、再び洞窟に入る。

「ここだ」
柊の声に促され、生活班の面々が洞窟から続々と出てくる。その度に歓声が上がる。
「あれが街ですね」桑原は笑顔で柊に尋ね、「ああ、少し休憩を挟んで、歩いてあの街へ向かう」とみんなへ指示を出した。
生活班のための休憩をしばし行った後、「では、あの街に向かって出発する。予想では、夕方には着くだろう。行くぞ」柊の号令に従い、柊を先頭に一斉に歩き出す。

街と出発地との距離がちょうど半分ほどになったころ、後ろを歩いていた北山と菊池が先頭にやってきて、「柊さん。疑問なんですが。どうしてあそこに人が住んでいないのでしょう。こうして渡ることができるのに」
至極当然な疑問だ。
近くに街があり陸続きで柊たちが流れ着いた場所に行くことができるにもかかわらず、人の手が加わった形跡がないのだから。
「さぁな。だが、おおよその検討は付く」柊の言葉に北山が続ける「やはり、あの施設が原因だと思いますか」
二人以外には聞こえないような小声で「十中八九、そうだろうな。この星の人間の戦闘力と組織の戦闘力とでは雲泥の差がある。だから、あそこへ行った人間は、ことごとく排除…殺されたてきたのだろう」柊は前を向いたまま答える。
「やはり、そうですよね。私たちだけで自動人形を倒せるとは思えません」北山の言葉に菊池もうなづく。
重い沈黙が辺りを支配する。
その沈黙を破ったのは北山だった。
「ところで、あの街に着いたらのことですが、私の会社は世界展開しているので、あの街にもあると思います。ですので、みなさんが自分の家に帰れるよう支援したいと考えています。もちろん無償でですよ」
「本当か?!ちょうどどうしようか考えていたところだ。助かる。ありがとう」と柊は笑顔で続ける「でも、良いのか、無償で?」
北山も笑顔で、「苦労を共にした仲間じゃないですか?当然ですよ。仮にダメだと言われても、社長命令でやらせますよ。ははは」と笑う。
さらに続けて、「ま、商品の1つでも買ってもらえるとうれしいですが」
どっと笑いが起きる。
「柊さんはどうするんですか?」との菊池の問いに、「そうだな。あの船でやり残したことがあるから、なんとか戻れたらと考えている」
「なるほど。そうなんですね。では、あの街に着いたら、もうみんなとはお別れですね」少し悲しそうな表情を浮かべる、菊池。
「仕方ないことですよ」との北山の言葉に柊もうなづく。
「その時はもうすぐだ」柊が指さす先には街がもうすぐそばの距離にあった。

柊の予想を嬉しい方向で裏切り、夕方になるまでには街にたどり着くことができた。
「皆さん、なんとかたどり着くことができましたね。お疲れ様です。で、これからのことですが、家まで帰れるように我が社で支援させていただきたいと思います」との北山の申出に、ありがとうという声が上がる。
続けて、「その為には、我が社の支社を探す必要がありますので、しばらくここで待っていてください。では、行ってきます」
北山がその場を離れようとした時、「私も行こう」と柊がその後に続き、二人は聞き込みをするため、その場を離れる。

二人は人通りの多い所を探し当て、聞き込みを始めた。
人当たりが良い北山が、「すいません。この街に株式会社ノースの支店は、ありますか?」と笑顔で尋ねる。その横にいる柊はもちろん無表情だ。
「え?ノースですか?たしか…ここをまっすぐ行ったチェリー通りにありましたよ。その辺りでまた聞いてみてください」仕事着に身を包んだ男性が答える。
「本当ですか?!ありがとうございます。ちなみに、この街はなんという名前ですか?私、気ままな旅行中で、今着いたところなんです」頭に手をやり、北山は照れた様子で再び尋ねる。
「そうなんですか。旅は良いですね。私も行きたいな…っと、この街の名前ですね。ユーモラントと言います。あっ、海が近いので魚が美味しいですよ。ぜひ食べてみて下さい。それでは、私は仕事がありますので」片手を挙げ、男性は目的地へ向かった。
その後ろ姿へ、「ありがとうございます」と頭を下げる北山。
頭を上げると、「では、行きますか」という言葉に、「ユーモラントと言いうと最近、私の知り合いが引っ越してきた街の名前だったはずだから、私はそこへ向かおうと思う。すまないが、以後のことは任せる」
「そうですか。わかりました。あとは、私の範疇になると思いますので、大丈夫だと思います。ここまでありがとうございました」深々と頭を下げる北山。
「大丈夫だ。気にするな」北山の両肩を当てる柊。
「では、サポート契約の準備が整い次第、連絡します」との言葉に、「よろしく頼む」という柊。
「ありがとうございました」再び頭を下げる北山を残して、柊は歩き出した。

2 知己

「たしか…この辺りだったはず…」柊の元に届いた手紙に書かれていた住所を何とか思い出した柊は、具体的な場所を人に訪ね尋ねながら、人通りの多い繁華街から離れ、目的地がある人通りの少ない一角にやってきた。
首を右へ左へとせわしなく動かして目的地を探していると、 「あれか…」通りの右側に看板が出ていた、ドドンコ・ファクトリーという看板が。
ドドンコ・ファクトリーと書かれた看板の下には木製のドアがあり、それを開き一歩足を踏み入れた瞬間、金属と油の臭いが漂い、キュイーーンという機械音が鳴り響いていた。
それらを気にも止めず柊は歩みを進めると、バチバチと火花を散らし一心不乱に何かを作っている人物がいた。
頃合いを図り、手が止まったところで声をかけた。
「ドドンコ爺さん」大きな声を出す。
呼ばれた人物はゆっくりと付けていたマスクを外し、「なんじゃ、うるさ…お~、由夏嬢ちゃんじゃないか!久しぶりじゃのう。元気にしてたか?どうしたんじゃ、今日は?何か直してほしいものがあるのか?」筋肉で引き締まった大きくて硬い胸にギュッと柊を抱きしめ、質問をまくし立てる。
「やめろ、暑苦しい」抱きつくドドンコを剥がし、「なんとか元気だ。今日はたまたまこの街に来たから寄った」
柊から引き剥がされ少し悲しい表情で、「そうか。では、次の街へ行くのか?」
「それなんだが…」

「というわけだ」この街に来るまでの経緯を簡単に説明した。
「なるほどな。それは大変だったな。わしに協力できることがあったら、言ってくれ」と柊を再び抱きしめる。
「ありがとう。助かる」とドドンコを剥がし、「早速で申し訳ないが、やり残したことがあるから船に戻ろうと考えている。そのための資金を借りたい。よろしく頼む」頭を下げる。
「ああ、任せておけ。しかし、あそこが死の島とよばれている所以は、組織が関与していたからということか…」ドドンコは、柊の秘密を知っている側の人間だ。
「ああ。そこにいたやつは倒したから、しばらくは大丈夫だ。一応、報告はするが対応してくれるまで気をつけてくれ」
「わかった。気を付けよう。で、由夏嬢ちゃんは、すぐにでも出発するつもりか?」
「ああ」
「そうか…さみしいのぅ…」悲しい顔を浮かべるが、「おお!そうじゃ。由夏嬢ちゃんに頼みたいことがあったんじゃ。ちょっと待っててくれ」バタバタと部屋の奥へ消える。
キュルキュルと音を立てながら、奥から布をかぶせた柊と同じくらいの大きさの物体を押しながら、ドドンコが現れる。
「由夏嬢ちゃんに頼みたいのは、こいつじゃ」と持ってきた物体をポンポンと叩く。
「これは?」と訝しむ柊の目の前でドドンコは、物体にかぶされた布を取る。
そこには、白い色した鎧のようなものがあった。
「これはのぅ。わし渾身の作、よっちゃんじゃ」と胸を張るドドンコ。

沈黙が流れる。

「…ゴホン…え~これはな、自身の筋力を補助し、普段の何倍もの力が出るようになるスーツじゃ」どうじゃ、すごいじゃろと褒めてアピールをするドドンコ。
「で?」ドドンコの褒めてアピールを完全無視する柊。
しょぼんとした顔でドドンコは、「こいつは、すごい力が出せるようになるスーツなんじゃが…怖い、怖いと言って誰も着てくれんのじゃ」
「友達がいないんだろ」柊の呟きに、「違うわ!友達の一人や二人、三人や四人は余裕でいるわ!実際、100人はいるぞ」
「…」
「…」
「…」
「うそです、ごめんなさい。友達いません」
泣きそうな顔のドドンコの肩をポンと優しく叩き、「で、そのスーツを私に着てほしいと?」
「そうじゃ。試着してくれんか?」上目遣いで懇願するドドンコに、「わかった。着よう」と快諾する。
「よし。そうと決まったら、善は急げじゃ。付いて来てくれ」
満面の笑みでスーツを運びながら、部屋を出るドドンコの後に続き、柊も部屋を出る。

「ここじゃ。ここでやるぞ」
ここはドドンコの店からそれほど離れていない空き地だ。空き地には、柊の2倍を遥かに超える大きさの岩があった。
その岩をドドンコは指差し、「あれを持ち上げてくれんか」とキラキラした瞳を柊に向ける。
「っと、できんとは思うが、スーツを着る前に岩を持ち上げてみてくれ」
柊はドドンコの言葉を受け、岩の前に行き、かがみこんで岩を持ち…上がらない。
「無理だ。重すぎてビクともしない」と無表情の柊に、「よし。では、このスーツを着て、岩を持ち上げてくれ」言うや否や、そそくさと柊の体にスーツを取り付ける。
スーツを着た柊は再び岩の前に立つと、先ほどと同様、かがみこんで岩を掴み、意を決して体に目一杯力を入れた瞬間…
岩はまるで綿を摘み上げるかのような感覚で持ち上がっ…いや、飛んだ。
ボーっと飛び上がった岩を見上げていた柊は、ハッとする。
飛び上がった物は重力で落ちてくる…自明だ。
それに合わせて柊は腰を落とし身構え…落ちて来た岩を受け止めた。
その衝撃は重く、柊の足が地面に少し埋まっていた。
だが、柊の感覚的には重さを感じてはいなかった。
持っていた岩を「ふ~っ」と大きく息を吐き出しながら、ゆっくりと地面に置く。
柊の元にドドンコが駆け寄ってきて、「どうだった?最高だろう?ほしいだろう?」とキラキラした瞳を向ける。
「このスーツはすごいな。あれだけの大きさのある岩を軽々と持ち上げられる。このスーツは色んな場面で活躍しそうだな」との柊の言葉に嬉しそうな表情を浮かべるドドンコ。
「ただ…大きすぎて持ち運びが難しいな…」
柊の素直な感想を聞いたドドンコは驚きの表情を浮かべ、「た、確かに。よし。次はその点に気を付けて改良しよう」と頷く。
取り付けていたスーツをドドンコはテキパキと外す。
「ありがとう、助かったぞい。一旦、店に戻ろうかのう」と言い、スーツを運びながら戻っていく。

ドドンコの店に戻ると、「協力、ありがとう。その礼といっちゃなんじゃがスーツを持って行ってくれ。大活躍すること間違いなしじゃぞ」ドドンコは笑みを浮かべ親指を立てる。
「いや、いらない」間髪入れず答える柊。
「…え…」口をあんぐりと開けて驚愕の表情のドドンコに、「大きいから荷物になる」柊の追い打ちが突き刺さり、泣きそうになるドドンコ。
柊はため息をし、「ありがたく使わせてもらおう」スーツをポンポンと叩く。
表情を一転させたドドンコは、「そうじやろう、そうじゃろう。もう手放せなくなるぞい」と、ガハハハハと豪快に笑う。
やれやれといった表情で柊は「そうかもしれないな」と軽くいなし、「船に追いつくためには急いだ方が良いな。では、そろそろ出発しようと思う」
「そうか。やはり、行ってしまうのか。さみしくなるのぅ」柊を軽く抱きしめた後、ちょっと待っておれと店の奥に入っていく。
少しして戻って来ると、「これで大丈夫だろう」と柊にリュックと封筒を渡した。
サッとそれらの中身を確認し、「すまない。では、行ってくる」と言い残すと、柊はリュックを背負いスーツを押しながら駅へ向かうべく踵を返した。
「ちよっと待ってくれ」柊を引き留め、「そのスーツじゃが、現在の設定では、あの岩を持ち上げる程度の力を得られる。じゃが、設定を変えることでもっと出力を上げることができるぞ」と設定変更の仕方を教える。
「出力は上げられるが、上げた場合スーツがどの程度持ちこたえられるかはわからん。気をつけてくれ」と注意する。
「わかった。ありがとう」と言い、駅へ向かうため、歩き出す。
その後姿に「今度、飯おごるんじゃぞ」と声をかけて、ドドンコは柊を見送った。

3衝突

ユーモラント駅に着いた柊は、船の次の寄港地である街へ向かうチケットを購入し、無事に乗車することができた。
ちなみに、あのデカくて嵩張るスーツは、貨物車両に乗せた。
その際、高い別料金を取られたのは、言うまでもない。
列車の椅子に座り、ボーっと窓外の景色…駅のホームを眺めて出発までの平穏なる一時を過ごす。
すると、ポーという汽笛が鳴り響き、列車が動き始めた。
その動きに合わせて、窓外の景色も変わっていった。

所々に停車しつつ列車は丸一日半かけて、寄港先である街の駅までのもう少しというところまで来た。
食堂車で朝食をとり、柊はコーヒーを片手に自席へ戻る途中で、大きな声が聞こえてきた。
「さっきの駅、停車駅じゃなかったのかよ!俺はその駅で降りる予定だったんだよ。どうすんだよ」
「すみません」と謝る車掌に、詰め寄る乗客がいた。
ふとそちらを見やると、乗客が車掌の胸倉を掴んだたため、柊は急ぎ止めに入る。
「やめておけ」柊に腕を掴まれた乗客は手を離し、「次の終点で乗り換える。補償はしてもらうからな」と吐き捨ててその場を離れた。
車掌は乱れた襟元を正し、「ありがとうございます」と柊に頭を下げる。
「いや、気にするな。それより、もしかして駅を通り過ぎたのか?」聞こえたことをそのまま尋ねた。
「その通りです。私どもの不手際で大変ご迷惑をおかけしました。申し訳ありません」頭を下げる車掌。
柊は逡巡し、「私は冒険家の柊由夏だ。できることは少ないかも知れないが、なにか協力できることがあったら言ってくれ」と話した。
「あの冒険譚で有名な柊さんですか?!」驚きの表情を浮かべた車掌は、しばらく考えこむと、「ついてきてください」と歩き出した。

車掌は柊の前を歩き、列車の先頭車両にある機関運転室に案内し、機関運転室の中にいる乗務員に合図を送り、一言二言話すと鍵が開き、扉を開けて「どうぞ」と入室を促す。
柊が機関運転室に入ると、そこはまさに戦場ともいえるほど慌ただしく、他の乗務員が右往左往していた。
柊は予想以上の慌ただしさに驚きつつ案内した車掌を見やると、「冒険家の柊様ですので、正直にお話します」と前置きし、「現在、この列車は間もなく終点に到着します。ですが、何らかの不具合によりブレーキが効かず、止まることができなくなっています。とりあえず、蒸気エンジンは停止させましたが、駅までに自然に停車できるかどうか微妙なところです。このままでは、機関運転室がホームに衝突し、それにより蒸気エンジンが爆発。この列車だけでなく、ホームいる多くの人が巻き込まれてしまいます」と告げる。
無言・無表情で聞いている柊に、「何か良い案はありませんか?」と藁にも縋る様子で聞く。
柊は顎に手をあて考えると「1つ考えがある」と前置きし話し始めた。
「私が持ち込んだ荷物にパワードスーツというものがある。こいつは着用者の筋力を数倍…いや、数百倍にしてくれるというものだ。で、案についてだが…」
「まさか」この後の話の展開を予測し、車掌が声を上げる。
「ああ。そのまさかだ。このスーツを私が着て、最大限のパワーで列車を受け止める」と車掌を見つめて言う。
「そんなことできるんですか?」との車掌の問いに、「できるとは言えないが、私が考えうる案はこれしかない」と答える。
「少し待ってください。他の者と相談します」と機関運転室にいる他の乗組員と相談し、戻ってくる。
柊の目を見つめ、「私どもも色々と案を出し合い、手を尽くしましたがお手上げの状況です。ですが、このまま座して死を待つ訳にはいきません。私どもの力で解決できないのは悔しいですが、よろしくお願いします」と、その場にいる全員が深々と頭を下げる。
「わかった。では、そのスーツがある貨物車両に案内してくれ」
柊と車掌は貨物車両に向かった。

機関運転室がある先頭車両から貨物車両が連結された後尾車両に向かう間、窓外を流れる景色から何か違和感を感じ始めた乗客が騒ぎ始めていた。
そのざわつきを尻目に貨物車両に来た柊と車掌は、その扉を開き中に入る。
「一番手前の荷物の乗車券番号から考えると、柊様のスーツはこの車両の後ろの方にあると思います」車掌に促され車両内を歩いていくと、他の荷物に比べ一際大きい荷物が目に付いた。
「あれだな」と車掌に声をかけ、そこに向かうとパワードスーツがあった。
スーツを見上げ車掌が「これでそんなすごい力が出るのですか?」つぶやく。
スーツを着つつ「これを着て私の数倍はある大岩を投げたことがある」
「そんな大きさの岩を?!」感嘆の表情の車掌を見向きもせず、柊はスーツを装着し終え、「よし。では、車両の屋根を伝い、先頭車両に向かう」と告げた。
「わかりました」と車掌は貨物車両の天井を開けた。
すると、柊は軽く飛び、1つ前の車両の天井に飛び乗る。
その後は、次々と車両を足場に進み、先頭車両までたどり着く。
そして、前方を見ると終着駅が見えた。
現在の速度から考えて、このままでは100%ホームに突っ込む…そう確信した柊は大きく飛び、列車の前方に降り立った。

徐々に減速してはいるが未だ高い速度を保っている列車が、柊に迫る。
迫りくる列車を見つつ、柊は出力を最大に設定し、腰を落とし身構える。
柊と列車との距離が次第に近くなり…ドーンという衝突音が辺りに響く。
柊が列車を受け止めた音だ。
両手、そして、体を使い、必死の形相で列車を受け止めていた。
が、列車を受け止めることには成功したが、列車の勢いをなかなか止めることができず、柊ごと進んでいく。
だんだんと近づいてくる終着駅。
駅でも人が列車を止めようとしているという異様な光景に気づく者が現れ、「あれはなんだ?」などの疑問を口にする。そして、大騒ぎとなっていった。
一方、列車においても、急ブレーキがかかったような感覚に乗客は襲われているため、得も言われぬ不安感に苛まれていた。
そして、柊は駅との衝突の危険から一刻も早く列車を止めるため、より一層全身に力を込める。
列車は柊ごと突き進み、柊の足元ではガガガという音と共に地面がめり込み土煙を上げる。そして、とうとう終着駅がももうすぐそこまでというところに来ていた。
だが、次第にその速度は緩やかなものとなる。
列車の速度が更に弱まっていき…列車は止まった…
終着駅に入る寸前のところで…。
成り行きを固唾を飲んで見守っていた駅、そして、車両内から人々の歓声が上がる。
柊は天を仰ぎ、大きく息を吐く。
そこに車掌がやってきて、「柊さん。ありがとうございます。助かりました」と目から大粒の涙を流しながら、深々と頭を下げる。
「いや、気にするな」と話す柊のパワードスーツから黒煙が上がる。
「やはり、最大出力には耐えられなかったか。ドドンコ爺さんに言わないとな」黒煙が上がるパワードスーツを脱ぐ柊。
「柊さん。後は私どもの仕事です。お任せください」との言葉に柊は、「ついでに、こいつの処分もよろしく頼む」と話すと列車の自席に荷物を取りに向かう。
「はい。それくらい、お安い御用ですよ」と車掌は柊を見送った。

4騒乱

自席で荷物をまとめて、柊は未だざわめく列車・駅を後にした。
「しばらく街は混乱してるだろうし、港へ行く前に少し街を歩くか」
歩き出した柊は人通りが多そうな場所へ向かった。

「ここがこの街の繁華街か…」周りの景色を見ながら独りごちる。
この街の繁華街は、高層ビルが立ち並び、人通りも多く、かなり活気ある場所だった。
「とりあえず、南の方に行ってみるか」と南へ行こうとしたその時だった。

ドカーン

後ろで爆発音がし、反射的に振り向く柊。
振り向くと、煙が立ち込め、粉々になった石のかけらが飛び散っていた。
何が爆発したのか思考を巡らすと、それはこの繁華街の象徴かのように立っていた石像だったことに気が付いた。
石像が勝手に爆発することなどない…となると、誰かが爆発物を仕掛けたか…と考えているとノイズが聞こえ始めた。

「みなさん、はじめまして。私は暁同盟の代表、ジャンクです。暁同盟というのは、簡単に言うとレジスタンスです。と自己紹介はこれくらいにして、石像の爆発、楽しんでいただけましたか?そうですか。楽しかったですか。それは何よりです。では、みなさんのご期待に応えて、新たな爆弾をご用意しました。今度の爆弾は、石像のものとは比べものにならないくらいの威力です。そうですね…具体的に言うとこの街の半分くらいは吹き飛ぶのではないでしょうか」
ジャンクの言葉に悲鳴が上がる。
「ま、吹き飛んでも良いですよね。これだけ汚職にまみれた街ですから。起爆時間は夜の12時です。あと7時間ほどですね。そういうことですので、爆発を楽しんでくださいね。あっと…忘れていました。これだけでは一方的過ぎて楽しめませんよね。楽しいことはフェアでないといけません。ヒントは、まだ発覚していませんが5月に知名度・人気共に抜群の超大物重鎮政治家が行った収賄です。いったい誰からどのくらい貰って、何をしたんでしょうね…ふふふ…私、気になります!っと、こんな感じで1時間ごとに設置場所のヒントを出します。戦々恐々・悲喜交々あると思いますが、爆発を楽しんでくださいね。では、みなさん、また会いましょう」
ブツッという音とともに音声は途絶えた。

音声が途絶えると同時に柊は走り出した。
逃げ出す者、騒ぎ出す者、泣き崩れる者など混乱している街中を柊は走る。
警察へ…。

おわりに

のびのびTRPGスチームパンク:ソロプレイの短編小説…投げっぱなしで終わりましたが、プレイ時とは違った楽しさがあり、楽しく書くことができました。