リコの興味しんしん

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各々の興味・関心事などに関する雑学を書いていきます。

知っていると楽しい用語【蝶の生態】


この季節、蝶を見ることはめっきり少なくなりましたが、こんな俳句もありますね。

・季語「冬の蝶」で、「冬の蝶人に見られてあがりけり 富安風生」
・「凍蝶(いててふ)」で、「凍蝶の蛾眉衰えずあはれなり 高浜虚子
など。

どちらももの悲しい感じがしますが、蝶の生態からいえば越冬している個体が多い時期です。
学校で教わってからなかなか踏み込んでは知ることの少ない蝶の生態と用語について紹介してみたいと思います。

蝶について

蝶の数え方

蝶は一匹二匹や一羽二羽が一般的です。
しかし、学術論文では「一頭二頭」で数えられます。

雑学として、「蝶は頭で数えられることもあるのね」と知っておくと、お子さんにも教えることができて少し自慢できる薀蓄(うんちく)ですね。

蝶の分類

チョウ(蝶)は、昆虫綱チョウ目(鱗翅りんし目、ガ目とも)のうち、Rhopaloceraに分類される生物の総称です。

種の数は全部で1万8千種、日本には約260種おります。

ちなみに、蝶と蛾の生物学的な区別はありません。

蝶の化石の発見

ドイツ北部の地層から発見された化石標本〔鱗粉の一部〕は、三畳紀からジュラ紀初期にまたがる地層から見つかったので、約2億160万年前ということになります。

この発見は、植物化石から考えられる花の出現時期(約1億4千万~1億6千万年前)よりも、1億年ほど早くに蝶の祖先が地上を飛び回っていたことを示します。

つまり、初期の蝶や蛾が花の登場よりも先に地球に生息していたことになります。

すると、花の蜜を吸うための口吻が、どのような目的で使用されていたのかという謎が残るのですが、これについては「ジュラ紀に誕生した植物の中でも最もポピュラーな裸子植物の花粉を食べていたのでは」と推測されています。

蝶の一生

蝶は完全変態です。

完全変態とは、昆虫が卵・幼虫・蛹(さなぎ)の段階を経て成虫になることです。

卵の殻はたんぱく質で出来ています。

卵は白、黄色、オレンジ色、茶色、緑色などがあり、形も球形、紡錘形など様々です。

多くの場合、種類によりますが卵の色で産まれてからどのくらい日にちが経ったか予想することも出来ます。

蝶の卵は、ニワトリの卵のようにかたい殻で覆われています。
この殻は水分の蒸発を防ぎ、酸素を通して呼吸もできます。

卵には撥水性のある空気が通る呼吸孔が表面にたくさんあり、卵の表面の約12%を占めるといわれています。

卵の時は体内の活動も少ないので、必要な酸素が微量ですむため、呼吸孔から雨粒の中でも呼吸することができます。

幼虫~若齢・中齢・終齢~


脱皮を繰り返しながら成長します。

卵から孵化(ふか)した幼虫を1齢(れい)幼虫と呼び、以降、脱皮するたびに齢が進み、普通4~5齢を経て蛹(さなぎ)になります。

1~2齢を若齢(じゃくれい)、3~4齢を中齢(ちゅうれい)、蛹の前を終齢(しゅうれい)と呼ぶこともあります。

幼虫の食事事情~寄主植物・食草・食樹・寄主植物特異性・共進化~

幼虫は一般的に植物を食物としています。

幼虫が利用する植物は、アゲハチョウがミカン科植物、モンシロチョウはアブラナ科、アオスジアゲハはクスノキオオムラサキはエノキといった具合に種ごとに異なります。

このように決まった植物のことを寄主(きしゅ)植物もしくは食草(しょくそう)、食樹(しょくじゅ)と呼んでいます。

多くの幼虫は植物の葉を食べますが、ツマキチョウやツバメシジミはつぼみや花、実を好みます。
また、アブラムシ類やアリの幼虫を食べる種もいます。

上記のように、限られた植物しか利用できない現象を「寄主植物特異性」といいます。

限られた植物しか食べられない理由は

どんな植物でも食することができれば、食べるものに困ることなく成長できるのにと思いますよね。
それができないのには、こんな理由があります。

食べられる側の植物が、自身を守るために毒物質や忌避成分を作って防御するのです。

幼虫としては食べないと生きていけませんから、解毒する仕組みを発達させていこうと進化します。

植物のほうでも新たな防御方法を考えます。
すると、幼虫はそれを打ち破る策を身につけていきます。

このような競争の中で、一つの科(植物)への対応策を深めていくしかなくなるのです。

昆虫と植物は、競争しながら共に進化を遂げていきます。
このような進化を「共進化」と呼びます。

蛹~前蛹・帯蛹・垂蛹・帯糸・ガットパージ・ワンダリング~

この蛹の形態は帯蛹

前蛹(ぜんよう)とは

蛹になる前に、幼虫は体を固定してじっと動かなくなります。
これを前蛹といいます。

帯蛹(たいよう)とは

シロチョウ科やアゲハチョウ科は、頭が上を向き腹部末端で基物に固定し背中を通した糸で体を支えます。
これを帯蛹といいます。

垂蛹(すいよう)とは

タテハチョウ科(オオムラサキが代表的)やマダラチョウ科は、腹部末端を固定し頭を下にしてぶら下がります。
これを垂蛹といいます。

これらのとき使う糸のことを帯糸(たいし)とも呼びます。

ガットパージとは

幼虫が前蛹になる前に行う排泄行為をガットパージといいます。

ワンダリングとは

幼虫がガットパージのあと、蛹になる場所を探して動き回ることをワンダリングといいます。
 
蛹化(ようか)…蛹になることは、蝶にとってとても大事な成長過程と言えるでしょう。

成虫

成虫も主に植物に依存して生活しています。

アゲハチョウやモンシロチョウは花の蜜を吸いますが、ゴマダラチョウヒカゲチョウのように樹液を主な食べ物にする種もいます。

また、ジャノメチョウのように花にも樹液にも来る種や、ウラギンシジミのようにアブラムシの甘露や熟れた果実を特に好む種もいます。

このように、蝶は幼虫も成虫も植物を主な食べ物としています。

世代とは

アゲハチョウを例にみてみますと、4月ごろ越冬したアゲハチョウの蛹から成虫①が出てきます。
そのアゲハチョウが相手を見つけ交尾し、メスは卵を産みます。

卵から孵化した幼虫は、気温も暖かくなって成長のスピードが速くなり、初夏のころには成虫➁になります。

この成虫もまた卵を産み、夏の終わりのころに成虫③になります。

そして、また卵を産み、それが秋に成虫④になります。
この成虫が産んだ卵は蛹まで成長し越冬します。

このように、アゲハチョウは春から秋にかけて4回成虫が出てきたことになります。
これを「4回世代を繰り返した」といいます。

最初に出て来た成虫を第一化(だいいっか)と呼び、そのあとに出た成虫を第二化、第三化……というふうに呼びます。

アゲハチョウは、年四化性(ねんよんかせい)ともいわれます。

つまり、蝶が卵から幼虫になり、蛹を経て成虫になることを一世代といい、種類によっては2回、3回と繰り返し、モンシロチョウでは年に5、6回も世代を繰り返すのです。
このため、モンシロチョウやアゲハチョウは、はかない命と言われながらも春先から晩秋までいつでも見ることができるのですね。

この世代交代は地域によって変化するものが多く、寒冷地では少なく、温暖地では多くなる傾向があります。

寿命

例えば、モンシロチョウなどの寿命は40~50日ほどです。

卵から成虫になって生命を終えるまで、多くの蝶の寿命は長くても数ヶ月程度(1年未満)です。

蝶が活動的に生きられる期間は短くて、およそ10日間くらいです。
成虫は交尾相手を見つけて次世代を残すためだけに短い期間を生きるのです。

まとめ

蝶の一生はとても儚く、ふわふわと風に流されている様子は魂のようだともたとえられますが、幼虫期の食欲旺盛さや蛹化するときの糸を巧みに自分に巻きつける動きなどとてもパワフルな一面も持っています。

蛹から蝶になる変態プロセスは、「メタモルフォーシス」といわれ、自然界の素晴らしく不思議な現象のひとつですね。

この季節、親子でかくれんぼをしているときなどに目の前の枝に越冬中の蛹を見つけるかもしれません。
そんなときに、この記事を思い出してくださったら嬉しいです。

ここで紹介した用語の一覧若齢  中齢  終齢  寄主植物  食草  食樹  寄主植物特異性  共進化  前蛹  帯蛹  垂蛹  帯糸 ガットパージ ワンダリング
writen by せりとーち