リコの興味しんしん

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各々の興味・関心事などに関する雑学を書いていきます。

スミレの不思議な生態~閉鎖花とは~

はじめに
会社の近くに駐輪場があって、そのスペースにはガードレールが片側にあり、その下の僅かな隙間にスミレが自生しているのに気づいたのは二年くらい前でしょうか。

そして2020年10月も末の秋のさなか、ふと足元のスミレを見て疑問に思いました。

はて?私は毎日のようにスミレの株を見ている、青々とした葉を見ている、なのになぜ花に気づかなかった?のかと。

スミレは花を咲かせることなく種をつけていました。
これがスミレについて調べてみるきっかけでした。

スミレの生態

スミレのたくましい種子作り

一般的な花の種子づくりの方法は、強い色彩や香り高い花を咲かせて昆虫によって受粉したり(虫媒花)、風によって受粉したり(風媒花)します。
スミレも花を咲かせ種を作りますが、ほかの植物と違うのは初秋までの長い間、種を作り続けるという点です。

スミレは早春、他の植物に先駆けて咲き、虫媒花として他の個体と受粉して強い遺伝子を持つ種を作ります。
その後は、他の植物が繁茂し目立たなくなってしまいます。

そこで、スミレは多産の道を選びました。
花を咲かせるエネルギーを種子作りに回したのです。

閉鎖花とは

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春に花を咲かせたスミレは、秋頃まで種を作り続けます。
しかし、花は咲かせません。

開かない花冠の中で雄しべの花粉が雌しべについて種ができるのです。これを自家受粉といいます。

このような花を「閉鎖花」と呼びます。
そして閉鎖花の代表がスミレです。

ちなみに、閉鎖花に対して一般的な受粉をする花を「開放花」という呼び方もあるようです。

自動散布

スミレの果実(蒴果=さくか)は3つの果皮片に分かれ、乾燥によって果皮片の両側が内側に曲がります。
この内側に曲がる圧力によって種を弾き飛ばすことができます。

つまり、スミレは種を自動散布する力を持っているのです。

それでも閉鎖受粉から作られる種だけでは、遺伝的な多様性がなくなるのでスミレはもう一工夫しているのです。

その工夫とは

スミレは種にエライオソームと呼ばれる蟻の大好きな甘い物質をつけていて、遠くまで蟻に種を運んでもらいます。

蟻はエライオソームだけを食べて種を巣穴の外に捨てるので、スミレはそこで芽を出すことができ繁殖していくことができるのです。

肉眼でも見れるよ

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今、私の手元には今秋に閉鎖花から採取したスミレの種があり、エライオソームを見ることができます。

ルーペを使えばはっきりと白っぽいエライオソームを見ることができます。
だんだん乾燥していくとわかりづらくなりますが。

身近なところに

スミレは都会でも見つけることができます。

ガードレールの下や歩道の立ち上がり部分の下の隙間などを見れば自生していることが多い植物です。

時間があれば開花した花から採れる種と閉鎖花から採れる種の発芽率を調べたりするのも楽しいかもしれませんね。

スミレあれこれ

花言葉・スミレのお菓子

花言葉は「誠実」 「謙虚」 「小さな幸せ」。

スミレは。西洋ではバラ、ユリと共に聖母マリアに捧げられ、バラは「美(beauty)」をユリは「威厳(majesty)」を、スミレは「謙虚(modesty)」と「誠実(faithfulness)」を表わすと言われています。

そして、この3つの特徴を兼ね備えた人を「理想の女性」としています。

あと。ハプスブルク家の皇妃エリザベート(愛称シシー)が愛したお菓子に「スミレの砂糖漬け」があります。
そのまま味わうも良し、紅茶に入れて色の変化や香りを愉しむのもいいですね。

スミレの別名

スミレは、相撲取草(すもうとりぐさ)、菫々菜(きんきんさい)とも呼ばれています。

まとめ

可憐な姿を持つスミレですが、種族存続のためにいろんな工夫をしているんですね。
そのたくましさに惹かれますね。

スミレを見るために野山に行けない場合でも、園芸種で楽しむことができますので、身近なところにスミレを咲かせて、花のない時期も観察して発見の喜びを味わってはいかがでしょうか。

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今年もスミレは元気に花を咲かせて、私たちを癒してくれています。

writen by せりとーち